初心者ダイバーにとって中性浮力の習得は簡単ではありません。
ましてやそこにドライスーツの浮力調整が加わると作業の複雑化し、OW受講者や初心者ダイバーに
冬ダイビングに対する負担感や苦手意識を与えることは少なくありません。
そこで7㎜のウエットスーツを活用はダイバーの負担感を減少できるか、
東西の人気ダイビングショップに聞いてみました。
OW取得したてのダイバーがドライスーツに苦手意識を感じやすい
「OW受講者のほうがドライスーツに抵抗感なく使用できる」と話すのは、首都圏で多くのダイバーから支持される人気ショップのインストラクターです。
同店では冬季のOW講習にドライスーツを着用して行っているそうです。その指導方法はBCDの使用を水面での浮力確保のみとし、水中ではドライスーツだけで浮力調整を行うというもの。
これによりダイバーはあれこれと調整する必要はなく、ドライスーツの浮力だけに集中できるので、ドライスーツが初めてのダイバーもスキルをスムーズに習得できるそうです。
「OW講習を受けるダイバーよりも注意深く接するべきなのが、夏にOWライセンスを取得して初めて冬にドライスーツを着るダイバーです」と同インストラクターは話します。
「浮力調整にまだ自信がない、というところにドライスーツの浮力調整が加わると、混乱したり煩わしさを感じやすくなります。そうした経験談の広がりもあり、多くのダイバーがドライスーツに対してネガティブなイメージを抱いてしまうことも少なくないようです」
そういった初心者ダイバーがウエットスーツでできるだけ長い期間を潜り、その間にしっかりと浮力調整のスキルを定着させてからドライスーツを着る、というのはドライスーツの浮力コントロールをストレスなく行う一つの手段。「そうした点で7㎜ウエットスーツは、長い季節を潜るために有効だと感じます」。
12~4月の最も水温が下がる時期については「やはりドライスーツが必要だと思います。でもドライスーツは動きにくく、本来はウエットスーツに越したことはないんです。7㎜タイプの登場でウエットスーツで潜れる時期を延長し、『ドライスーツを着たくない』と冬を避けてきたダイバーもインナーやフードを重ねることで年内いっぱいまで潜れるようになるのでは」と冬ダイビングへの活用を示唆しています。
OW講習での7㎜ウエットスーツ着用を視野に
「関西ではウエットスーツを好むダイバーが多く、ドライスーツを避ける傾向にあると感じます」と話すのは関西にある老舗ダイビングショップのインストラクターです。
「ドライスーツについてダイバーからよく聞くのが、浮力調整の複雑さだけでなく、シールによる首の苦しさ。だから『ウエットスーツで潜れる季節が終わったら今年のダイビングは終わり』というような人も多いのです」
ドライスーツが苦手なダイバーが多いことから、同店では冬のダイビングやOW講習にセミドライスーツを積極的に取り入れており、今後は7㎜ウエットスーツの活用を視野に入れていると言います。
「冬でも着用されるウエットスーツはロクハンが多いのですが、着脱も大変な上に、岩などにぶつかると生地が傷ついたり破けたりしやすいため、初心者には取り扱いが難しいと思います。
そこでインナーなどを重ねることで温かさの調節もできる7㎜ウエットスーツなら、初心者やOW講習者にも使用しやすいと考えています」と話します。
また前述の関東のインストラクターと同様に、「初心者ダイバーがウエットスーツで浮力調整をしっかりと身に付けてからのほうが、ドライスーツを着こなしやすいと感じる」と言います。
「浮力調整は、ドライスーツとBCDでは別物であって両方きちんと慣れないといけないのですが、ウエットスーツで中性浮力が取れるようになってからのほうが、ドライスーツの浮力調整がうまくいく人が多いようです」
ドライスーツが嫌いで冬は潜らないというのはもったいない、というのが切実な思い。「だからセミドライスーツも提案していますが、そんなダイバーに7㎜ウエットスーツを着用してもらうことで、冬も楽しんでもらいたいと思っています」
冬が初めてのダイバーに、選択肢と可能性を
「冬は寒いからドライスーツ」というのは一つの常識ですが、だからといってそれだけに縛られてしまうのはダイバーが選択肢や可能性を失ってしまうことにはならないでしょうか。
ウエットスーツには、様々な厚さのものがあり、またたとえ同じ厚さであってもネオプレーンの種類や特徴によって、その温かさは変わります。ヨーロッパ製には安全性能基準が設けられており、その防寒機能も厳格に提示されています。
そういった素材や基準も参考にし、冬も上手にウエットスーツも活用していくことで、冬の海を愛するダイバーは増えるのではと私たちは考えます。みなさんはどう考えますか?